取引相場のない株式の取得をめぐり、純資産価額等を参酌した価額と取引価額の差額に対して経済的利益の享受が認定されたことの可否が争われた事案で、国税不服審判所は差額相当額が一時所得に当たるため経済的利益の享受に当たると認定、棄却
この事案は、自動車電装部品製造業を営む同族会社の代表者が、買い取った取引相場のない自社株式の低価取得がトラブルになったもの。原処分庁が1株当たりの取得価額と時価との差額を一時所得に該当すると認定して更正処分を打ってきたため、その取消しを求めて審査請求していた事案だ。請求人は、第三者間の自由な経済的取引であり、客観的交換価値である時価そのものであるから、経済的利益は発生しないと主張していた。
これに対して裁決は、所得税法36条1項が定める経済的利益には、資産を低額で譲り受けた場合の時価とその対価との差額に相当する利益が含まれる、時価とは譲受時点の客観的交換価値を指すと指摘。また、客観的交換価値とは、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間において自由な取引が行われる場合に通常成立する価額、つまり市場価額であるとも解釈した。
しかし、審査請求人の会社の株式は取引相場がなく、適正と認められる売買実例や類似法人で株式等の価額がある株式とは認められないことから、純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額を算定するのが相当であり、財産評価基本通達178以下の例によるのが相当であると指摘した。
その結果、財産評価基本通達に基づいて算定した時価と取引価額との差額に相当する金額については経済的利益の享受にあたると認定、その所得は営利を目的とした継続的な行為から生じた所得以外の一時所得に当たると判断、審査請求を棄却している。
(国税不服審判所、2003.11.20裁決)
|
|
〒106-0032
東京都港区六本木3-1-24
ロイクラトン六本木9F
TEL : 03-3586-1701
FAX : 03-3586-1702
E-mail : info@zeirisi.info |
|
|
|